司法書士
これまで司法書士の業務は大半が不動産登記でしたが、裁判業務や成年後見など、近年では多様化してきています。それは、『経済環境の変化』、『司法書士業界の変革』のような環境の変化だけでなく、登記件数の減少に代表される競争激化がその流れを後押ししていると思われます。
また、扱う業務内容だけではなく、司法書士事務所の組織自体も変化してきております。これまで主流だった、資格者1名、補助者数名という小さい所帯から、大量案件を処理するために、従業員が数十人~100名を超える規模の事務所が登場しています。
司法書士事務所の分類
■司法書士事務所
主に地場密着で、不動産登記、商業登記に対応
■合同事務所
主に土地家屋調査士が在籍し、測量から権利の登記まで全般的に扱う
■大規模化による大量案件への対応
所員数を増やし、マンション案件や抹消に代表される、大量案件への対応を行う
■分野特化型の事務所
企業法務、国際・渉外案件の対応、SPC・証券化・信託登記、外資系企業への対応など
■総合事務所
行政書士、社労士、税理士といった他士業をグループ化した組織
■裁判業務に特化
債務整理、任意売却案件、詐欺事件などに対応
■実業分野への進出
別途法人を設け、不動産仲介、住宅ローンなどの事業への進出
詳しい仕事内容は、各求人ページの「業務内容」で確認できます。
司法書士事務所以外で働く
司法書士事務所以外で司法書士が活躍できるポジションにはどのようなものがあるのでしょうか。
代表的な例としては、法律事務所、会計事務所、企業法務での就業が挙げられます。勤務司法書士、独立開業以外の選択肢として今後のキャリアプランを考えるうえで、参考にしてみてください。
法律事務所
■パラリーガルとして
不動産証券化やSPC関連、M&Aに関するデューデリジェンスといった案件に携わります。その中で発生する、不動産・商業登記の処理や実行において活躍できます。また、英語や中国語に対応し、外国人案件(渉外登記案件)に対応するケースも増えています。
■認定司法書士として
140万円以下の訴訟案件を担当します。建物明け渡し対応、交通事故の物損事故の代理人(140万円以下の事件)への対応といった一般民事事件から、相続のような家事事件を弁護士と共同で担当するなど、多岐にわたる活躍ができます。
法律事務所では、大規模化と共にワンストップ化も進んでいます。司法書士、税理士、社会保険労務士といった他士業の方も加わりワンストップサービスを提供することで、他事務所との差別化を図ろうとしています。そのため、司法書士を採用したい、もしくは事務所内で開業してほしいという需要は今後も増えるかもしれません。
会計事務所
会計事務所と司法書士は密接な関わりがあります。会社設立や顧問、相続などあらゆる面において、登記や各種法的手続きが必要となる為です。そのため、会計士と司法書士がお互いに提携をし、クライアントの要望に迅速にこたえる体制を構築しています。
■司法書士として開業
会計事務所の中で司法書士として開業するケースです。自身の仕事や案件を行うなど、独自性は保ちつつも会計事務所からの依頼にも対応をします。物理的にすぐ近くにいるため、対面で打ち合わせも容易となり、迅速に事件へ対応することができます。
■司法書士法人の社員、勤務司法書士として就業
会計事務所内に設立された司法書士法人にて勤務するケースです。司法書士が対応する仕事が多いため、専属で業務を行うことがおおくなります。外資系企業に対してのSPCの登記手続き、会社法や登記法などの観点から見た法的助言、遺言作成、相続登記実務への対応といった業務です。大規模な会計事務所に多く見られます。
会計事務所も法律事務所と同様、大規模化、ワンストップ化の流れが進んでいます。特に会計事務所内に司法書士法人が設立されるケースが散見されるようになりました。
企業法務
司法書士法との関係上、司法書士として企業で働くには越えなければならないハードルがあります。そのため、弁護士ほど企業で活躍できているとは言い切れない現状です。しかし、司法書士有資格者を含めると様々な業種で活躍しています。特に多いのが、不動産会社、金融機関、サービサー(債権回収会社)です。
■不動産会社
不動産物件や企業間取引を中心とした契約書リーガルチェック、各種法務対応、コンプライアンス、顧問弁護士とのやり取りなどを担当します。不動産を扱うプロとしての視点から、リーガルチェックが期待されます。
■金融機関
銀行内外での住宅ローンに関する契約書チェック、ローン事務センターで謄本処理などを担当。また、物件調査で不動産鑑定士との連携をすることもあるようです。
■サービサー(債権回収会社)
競売申し立てに関わる事務、担保権抹消書類の作成、債権譲渡に関わる書類の作成補助、その他アセットマネージャーのアシスタントなどに従事し、幅広い活躍をしています。
司法書士の給与
司法書士事務所へ勤務した場合、給与などの待遇はどのようなものになるのでしょうか。また、入所後の昇給や年収イメージを明確に開示していない事務所もあるため、勤務を続けたいという方にはキャリアプランを描きづらいかもしれません。
ここでは、司法書士事務所の月給や昇給、賞与といった待遇面について解説します。今後の就職・転職活動における参考にしてください。
司法書士の初任給
■未経験者の場合
司法書士事務所での勤務経験がなく、試験に合格してから就職した方の場合、月給25万円前後という定時が多く見受けられます。ただ、近年は試験合格者が減少し、人材難となっているため月給25万円より高い月給で募集する事務所もあります。
■経験者の場合
司法書士補助者の経験がある場合、経験の量や内容、面接の結果によって給与が上乗せされる場合があり、最初から月給30万円を提示する事務所もあります。
賞与について
賞与については、事務所によって支給の有無がわかれます。
■支給ありの場合
年1回もしくは年2回支給され、個人の能力と事務所の業績に連動して額が決まります。自身の成長や事務所への貢献度合いによって変化するため、同期入所でも金額が異なることもあります。金額としては、月給の1~4カ月分と幅があります。
■支給なしの場合
賞与として支給ではなく、年収での提示をされることもあります。年収を12ヶ月に分けて支給、もしくは夏季・冬季に1ヶ月ずつ上乗せして支給することもあります。
昇給について
昇給するタイミングはいくつかありますが、ここでは代表的な例を2つ挙げます。
■司法書士登録を行ったタイミング
資格手当として、これまでの給与に数万円上乗せされることが多いです。ただ、最初から高い月給を提示されている場合は、上乗せを見越した金額が入っているケースがほとんどです。
■在籍期間に応じた昇給
昇給を年1回設定している事務所が多く見受けられます。最初の数年間は少しずつ上がることが多いようですが、その後は個人の能力と事務所への貢献度変わってきます。
給与の高い事務所の特徴
■債務整理系事務所と登記系事務所の給与事情
以前は債務整理を扱っている事務所の給与が高い傾向にありました。しかし過払金案件の減少に伴い、他界給与を支払うことが難しくなっているようです。
■司法書士法人と個人事務所
司法書士法人の方が給与は高いというイメージを持っている方もいるかもしれませんが、実際司法書士法人と個人事務所とで給与に大きな違いはありません。
しかし、社会保険完備、福利厚生が整っているなどは司法書士法人の方が多いです。
■給与が高い事務所の特徴
いくつか注意点があります。
給与に見込み残業代が含まれている、賞与の支給が原則ないというケースもあります。
就職・転職活動において、給与を重要視されている方は、1年間を通じたトータルで考えた方が良いです。
給与を上げるポイント
司法書士は、ある程度勤務年数が経つと、定期的な昇給ではなく実力次第で昇給できるかが決まるようになることが多いです。給与を上げるにはどうすればよいか、そのポイントを解説します。
■営業活動ができる
営業活動を行って案件を取ってくることです。事務所の売り上げに貢献できるため、指標としてもわかりやすく、給与アップに反映がされやすいといえます。
■重要な業務を行っている、事務所の経営に欠かすことができない存在になる
様々な要素がありますが、代表的なものは下記です。
・事務所の中で自身でしか対応できない案件がある
・クライアントから担当として指名されている
・司法書士法人の社員司法書士として就業している
・事務所の経営に参画している(例:マネジメント、経営戦略に関与)
・新しい分野を立ち上げ、推進役を担っている(例:民事信託部門の立ち上げ)
勤務司法書士として、事務所の仕事をこなしているという状態ですと、年収500万円~600万円程度で止まってしまうことが多いです。年収600万円より多い年収を目指すのであれば、上記に挙げたようなことを積極的に行うと良いでしょう。
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